近年、「1日1万歩」が絶対という考え方は見直されつつあります。
実はこの数値、1960年代の日本で生まれた万歩計のマーケティング戦略から広まったもので、科学的根拠には乏しいとされています。
最新研究でわかった適切な歩数
2022年に医学誌『ランセット』で発表されたメタ分析では、15件の研究(うち8件は未発表)を対象に、歩数と死亡リスクの関連性が調査されました。
その結果、60歳以上では1日6,000〜8,000歩、60歳未満では8,000〜10,000歩で死亡リスクの低下が頭打ちになることがわかりました。
つまり、年齢に応じた「目安の歩数」が存在するということです。
さらに、歩く速さ(歩行の強度)については一貫した効果は確認されませんでしたが、『BMJ』誌の別の研究では毎分100歩のペースが中強度の運動とされ、心肺機能の向上につながる可能性があると示されています。
「最低限の歩数」はどれくらい?
2023年のメタ分析(『European Journal of Preventive Cardiology』発表)では、22万人以上を対象に1日の最低歩数を検証。
その結果、心血管疾患による死亡リスクを減らすには1日2,337歩以上、全死亡リスクを減らすには3,867歩以上が目安とされています。
逆に言えば、1日2,300歩未満では脳卒中や心臓病のリスクが高まる可能性があるのです。
歩数を増やす工夫|NEATと運動のスキマ時間活用
時間がなくても歩数を稼ぐ方法はあります。鍵となるのが「NEAT(非運動性熱産生)」。
これは、食事・睡眠・運動以外の動作で消費されるエネルギーを指します。
たとえば、子どもと遊ぶ、買い物袋を運ぶ、立ったまま作業をする、こうした日常の動きも立派な活動です。
同じ2023年の研究では、1日1,000歩増えるごとに全死亡リスクが15%減少、500歩増えるごとに心血管死亡リスクが7%減少することも報告されています。
また、1日の歩数は一度にまとめて稼ぐ必要はありません。
たとえば、5km歩くと6,000〜7,500歩程度になりますが、これを数回に分けて達成するのでも問題ありません。
最近は「エクササイズ・スナッキング(運動のスキマ食べ)」という考え方も注目されています。
自然の中を歩こう
ウォーキングは、気分の改善や創造性の向上、不安や抑うつの軽減にも効果があるとされています。
自然の中を歩くことでその効果はさらに高まると言われています。
「カラーウォーキング」や「直感ウォーキング」など、楽しみながら歩数を稼ぐ方法も試してみてください。
まとめ
- 60歳以上は1日6,000〜8,000歩、60歳未満は8,000〜10,000歩が目安
- 最低限必要な歩数は2,300〜3,800歩
- 歩数は分けて稼いでもOK
- NEATや短時間の運動でも健康効果あり
- 毎日の積み重ねが健康寿命を延ばします
無理のない範囲で、日々の歩数を少しずつ増やしていきましょう。