新幹線に乗るとき、指定席の座席表を広げて「どこに座ろうか」と迷うひとときは、旅そのものの序章のようで心を弾ませます。
窓の外にどんな景色が広がるのかを思い描きながら、目的地に向かう前から小さな期待を積み重ねていく時間でもあります。
もしあなたが富士山を堪能したいのであれば、迷わずE席を選ぶことをおすすめします。
新幹線が静岡に差しかかる頃、車窓の奥に富士山の白い頂がふっと姿を現し、やがてその雄大な姿が視界いっぱいに広がっていきます。
その瞬間は、何度体験しても新鮮な驚きと感動を呼び起こし、思わず息をのむほどです。青空を背景にそびえる雪化粧の峰は、まさに旅の象徴と呼ぶにふさわしい光景です。
一方で、A席に座ったからといって油断は禁物です。
静岡駅を過ぎ、安倍川を渡るあたりで、ほんの数秒間だけ富士山が姿を見せることがあります。
住宅街や丘陵の合間を抜け、視界がぱっと開けた瞬間に現れるその姿は、偶然に出会う宝物のようで、E席からの堂々たる眺めとはまた違った趣があります。旅路に差し込む小さなサプライズとして、A席ならではの喜びを味わえるのです。
こうした車窓の風景を最大限に楽しむためには、時間帯にも工夫が必要です。
富士山をもっとも美しく眺められるのは、空気が澄んだ晴れた午前中です。陽光を浴びて輝く白い山肌や、稜線の陰影がくっきりと浮かび上がる様子は、午後には得難い表情を見せてくれます。
せっかくの旅で富士山を望むなら、出発の時間を午前に合わせるのもひとつの秘訣です。
旅の計画を立てるとき、ただ目的地に到着するだけでなく、その過程に散りばめられた小さな楽しみを見逃さないことが、豊かな思い出につながります。
E席からの堂々たる絶景、A席からの不意打ちのような贈り物、そして天候や時間帯によって変わる富士山の表情。新幹線の窓辺は、そんな多彩な体験を与えてくれる舞台なのです。
旅のヒント
- 富士山を正面に望むならE席がおすすめ
- 静岡・安倍川周辺ではA席側も数十秒の注目スポットあり
- 晴れた午前中がベストビュー
次の旅では、座席を選ぶ瞬間から心を遊ばせてみてください。小さな選択が、旅の記憶を一層鮮やかにしてくれるはずです。